古き良き香りの漂う、
鄙なる地方都市――陽ノ宮。
そこに住み、日常を過ごす幾人もの人々。
彼らは彼らなりの思いや悩みを抱えながらも、
直向な気持ちで日々を送っていた。
古寺の一人息子・新堂克己とて例外ではなかった。
家では住職である父・京丞と
家業を継ぐ継がないで揉めてばかり。
親友・佐神塁の様子も近頃おかしくて、少し戸惑い気味。
平凡な日常、当たり障りのない日々。
いつまでも続いていくと思っていたそれらが、
ある晩――急激に姿を変える
陽ノ宮にはびこる鬼。
それを退治する祓師の存在。
自分の出生の秘密。
両親達が味わった苦悩。
全てを引き換えにして、
隠されていた世界を知った克己が
最後に下した判断は――。
例えば彼らの、物語。
始まるようで、終わらない。
問われる心、その真偽。
答えは誰にも、わからない。