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正人の読書日記Part2

「お早う」なのか「今晩は」なのか区別のつけにくい時間帯に投稿(ただいま、早朝5時)。
不規則な暮らしを貴方にお届けするEOS・シナリオ担当の正人です。
思い立ったが吉日というじゃありませんか。
書こうと思ったときが書き時なのです。
それはブログとて同じです。

余談はこれくらいにして、読書日記その2。

 続き

「オランダ靴の謎」 著/エラリー・クイーン 訳/井上勇 創元推理文庫刊

クイーンの国名シリーズも4冊目を数えました。
この「オランダ靴~」は初期クイーン3部作の中に数えられる作品のひとつであります。
言うまでもなく傑作であります。

「ローマ帽子~」を始まりとする一連の初期三部作に共通するのは「地味」という二文字。
解説の法月氏も明言しているとおり、まだアマチュアだった頃のクイーンの作品には、地味な事件で地味に論理を展開し地味に片付ける、といった地味~な印象がやはり強いように思われます。

個人的にエラリー・クイーンの作品で一番凄い部分とは、「改めてそう言われてみればなるほどその通りだな」と思わず頷いてしまうような事柄をいとも簡単に編み出してしまうところだと思います。
例えば「シャム双生児~」で両手でカードを引きちぎった人間は云々という部分とか、「Yの悲劇」でバニラの匂いを嗅ぐために中腰の姿勢で歩くことは不可能云々とか。
これらは彼らが共作という執筆形態を取っているからこそ編み出せる技なのです。
作家とはおしなべて孤独なものです。
一人の作家がひとつの作品を書くとなれば、その作品は否応なく「閉鎖的」なものとなってしまいます。
一人の人間がひとつの脳(意識)しか持ち終えない以上、盲点というものは必ず生まれる。
そうなれば、普遍的な要素を作品中に生み出すことは非常に困難となる。
エラリー・クイーンはその点を克服した。
唯一ではなく二つの価値観(脳)が存在し、互いに意見交換できる製作現場があるからこそ、前述のような所業を成し遂げられたのだと自分は考えます。

しかし展開や舞台背景が地味であるということは、即ちクイーンの十八番である華麗な論理展開がより際立っているということでもあります。
余分なものを削ぎ落とし、純粋な論理を展開するうえでは、地味になることも避けられなかったのでしょう。
地味になろうとも、あえてその道を選び、純粋なる論理の展開による解決方法を求めたクイーンには、敬服せざるをえません。

ただいまローマ帽子を積読中です。
何とか今月中には国名シリーズを読破しておきたいなぁ……。