冒頭で認めざるを得ないのは、ベゼルが時計パーツのなかで最も話題に上る要素であるかどうかについて、確信を持って断言することはできないという点である。しかしながら、それに匹敵する存在であることは間違いない。ケースはあまりに一般的であり、議論の対象とするには抽象的すぎる。一方リューズは主張が控えめであり、語るべき事柄として取り上げられる機会は少ない(現代の自動巻き時計であれば、ゼンマイが巻き上げられ、時計が停止することがない限りリューズを操作する必要はほとんどない)。日付窓に関する議論は、おおむね二分される傾向にある。すなわち、肯定的に受け止める者(あるいは少なくとも否定しない者)と、否定的な立場を取る者(少なくとも、存在しないほうが望ましいと考える者)である。
ベゼルに関しては、基本的な機能の観点から見れば、いくつかの主要なカテゴリーに分類されるものの、デザインの多様性はほぼ無限に広がり、人気のスーパーコピー時計 代引き専門店多くの場合時計のアイデンティティを決定づける要素となる。この点については、チューダー ブラックベイ プロを題材に、ダニー・ミルトンと筆者がPoint/Counterpoint記事で展開した議論を参照されたい。
black bay pro
チューダー ブラックベイ プロ
例として、ダイバーズウォッチのベゼルを考察する。これはピップ(発光マーカー)を分針に合わせることで経過時間を測定し、針の進行とともに経過した時間を正確に読み取るためのものである。当然ながら、いくつかの制約が存在する。その一部はダイバーズウォッチの国際規格であるISO 6425により厳格に定められており、これに対する異議の余地はない。だがそのような制約があるにもかかわらず、デザイン、素材、書体、蓄光素材などにおいて、ほぼ無限ともいえる組み合わせの可能性が広がっている。
本稿では、包括的な解説とはならないものの、広く流通している代表的なベゼルの種類について検討する。
経過時間ベゼル(カウントアップ式)
古典的な時計のベゼルとして挙げるべきものがあるとすれば、それはおそらくダイバーズウォッチの経過時間ベゼル(カウントアップベゼル)であろう。この名称の由来は明確である。ピップを分針の先端に合わせ、その時点から経過した時間をベゼルを用いて測定する仕組みである。ダイビングにおいて、時間管理は極めて重要である。したがって、実際にダイバーズウォッチとして認められるためには、タイミングベゼルが特定の要件を満たす必要がある。特に12時位置のピップには蓄光素材が用いられなければならず(その理由は明白である)、さらに、ベゼルは逆回転防止機構を備えた一方向回転式であることが求められる。この回転方向の制約は、安全性を確保するための設計である。万が一、ベゼルの位置が意図せずずれた場合でも、潜水可能な時間が実際よりも短く表示されることになるため、最悪の事態としては浮上を早めることになるに過ぎない。
Seiko diver
私の知る限り、回転ベゼルを最初に搭載した時計は、1930年代に製造されたきわめて希少なロレックス ゼログラフである。ただし、現代的なダイバーズウォッチにおいて回転ベゼルを備えた最初のモデルは、ロレックス サブマリーナーおよびブランパン フィフティ ファゾムスである。
経過時間ベゼル(カウントダウン式)
カウントアップ式ベゼルは経過時間を示すが、カウントダウンベゼルはその逆であり、特定の時間枠における残り時間を表示する機能を持つ。カウントダウンベゼルの仕組みはカウントアップベゼルとは異なる構造を採る。カウントダウンベゼルでは、文字盤に1から60までの目盛りが配され、60分を示す位置にピップが配置されている。
例えば、30分のカウントダウンを行う場合、30の数字を分針に対して正対する位置にセットする。分針がピップに到達した時点で、30分が経過したことを意味する。
Blancpain Air Command
カウントダウンベゼルの代表的なモデルとして、現在もっとも注目されているのがチューダー ペラゴス FXDである。このモデルは、水中で設定された航路を泳ぐ際の時間を計測するために設計されている。これは一種の推測航法(デッド・レコニング)に基づくものであり、特定の地点に到達するために、コンパスを用いて方位を維持しながら、一定の速度で泳ぎ続け、決められた時間内に目的地へ到達することを前提としている。なおカウントダウンベゼルを搭載した時計はFXDに限られず、ミドーやブランパンをはじめとして、意外なほど多くのモデルが存在する。
パイロットウォッチの回転計算尺ベゼル
パイロットウォッチの回転計算尺ベゼルは、多くの人にとって魅力的な機能である一方で、その正確な使い方を理解している者は少ない。私自身、掛け算以外の計算方法を習得しようと何度も試みたが、完全に身につけるには至っていない。回転計算尺ベゼルを用いることで、実に多様な計算が可能であることは理解しているものの、それらをすべて記憶しているわけではない。
Breitling Navitimer
回転計算尺ベゼルは、円形の計算尺の一種である。電卓が登場する以前、計算尺はさまざまな産業用途や科学計算に広く用いられていた(かつて、技術者や科学者がポケットプロテクターと計算尺を携帯していたのは定番の光景であった)。たとえばブライトリング ナビタイマーを用いて9×12の計算を行う場合、アウターベゼルを回転させ、12の数字がインナーベゼルの10(視認性を高めるため赤く着色されている)と正対する位置に合わせる。そのあとインナーベゼル上で9を見つけ、その反対側にあるアウターベゼルの数値を読み取る。視力が優れている者、あるいは老眼鏡を新調したばかりの者であれば、9と正対する数値が108であることを確認できるはずである。今であれば携帯電話の電卓を使用すれば瞬時に計算が完了する。しかし回転計算尺を用いることで、デジタル時代以前の航空界の英雄たちが持っていた計算技術の一端に触れることができるのではないだろうか。
コンパスベゼル
12時間表示の文字盤と時針を備えた時計があれば、北の方角を判別することが可能である。そして、北の方角が特定できれば、南・東・西の位置も自ずと明らかになる。
Breitling Exospace
北半球における基本的な手順は以下の通りである。まず、時計を水平に保持し、時針を太陽の方向に向ける(この方法は、北半球において太陽が南の空を移動するという事実に基づいている)。午前の場合、時針から時計回りに進み、時針と12時インデックスとの正確な中間点を求める。次に、文字盤の中心からその点に向かって直線を引く。これが北を指す基準線となる。コンパスベゼルはこの原理に基づいて機能するが、文字盤のマーカーを利用することで、進行方向に応じた方位の把握がより正確に行える。
タキメーターベゼル
タキメーターベゼルは、特定の距離における速度を測定するための機能であり、時速マイル(mph)または時速キロメートル(km/h)のいずれかに換算できる。基本的な使用手順は単純である。まずクルマを始動させ、最初の1マイル標識に向かう。測定区間において速度が一定であれば、その速度を直接計測できるが、不均一であっても区間全体の平均速度を算出することは可能である。計測を開始するには、最初の標識を通過したタイミングでクロノグラフを作動させ、次の標識を通過した時点で計測を停止する。その際、クロノグラフの指針が120を指していれば、1マイルを30秒で走行したことを意味し、速度は時速120マイル(約193km)となる。
Speedmaster caliber 3861
なお、タキメーターベゼルは時速以外の単位の測定にも応用可能である。たとえば、生産ラインにおいて1時間あたりの生産数を算出する場合を考える。最初の製品が通過した時点でクロノグラフを作動させ、次の製品が通過したタイミングで計測を停止する。その際、クロノグラフの秒針が120を指していれば、1時間あたりの生産数は120個となる(対象が自動車であれば120台となる)。
24時間ベゼル(固定式・回転式)
ベゼルの“名作”と呼べるモデルのなかで、人気という観点から見れば、ダイバーズベゼルが最も支持を集めるかもしれない。だがタキメーターベゼルにはスピードとロマンが詰まっており、回転計算尺ベゼルには計算機能という独自の魅力がある。しかし日常的な実用性において、ふたつのタイムゾーンを表示する時計の24時間ベゼルに匹敵するものはない。実際のところ、特定の区間における平均速度を知ることなくとも、問題なく生活を送ることはできる。ダイバーズウォッチのベゼルは多用途に活用できるものの、実際のダイビングに使用される機会は少ない。回転計算尺ベゼルは、カフェで『Infinite Jest(インフィニット・ジェスト)』を携えるのと同様の存在ともいえる。すなわち、機能性以上に所有者の知的な側面を演出する要素が強い。
Grand Seiko Spring Drive GMT
しかし、24時間ベゼルはきわめて実用的な機能を備えている。ひと目でふたつのタイムゾーンの時刻を確認でき(回転ベゼルであれば、理論上は3つのタイムゾーンにも対応可能)、時刻の把握を容易にする。さらにある程度の工夫をすれば、経過時間ベゼルとして使用することも可能である。一般的に、数字はインデックスと交互に配置され、5分間隔で並ぶ形式が採用されている。もっとも、計算に頭を使う必要があるならば、そもそもふたつのタイムゾーンを表示する時計を選ぶことはないだろう。実際のところ、最も低コストなGMT機能の代替手段としては、シャープペンシルでシャツの袖口にホームタイムとローカルタイムの時差を書き留めることにほかならない。
特集記事
Reference Points: ロレックス サブマリーナー 歴代モデルを徹底解説
ダイバーズウォッチのベゼルに関していえば、HODINKEEが2008年の創刊以来取り上げてきたすべてのダイバーズウォッチが特集記事としての価値を持つといえるだろう。そのなかでも、特に興味深く実用的な内容を含むのが、スティーブン・プルビレントによるReference Points ロレックス サブマリーナー 歴代モデルを徹底解説記事である。本記事は、クラシックな時計の誕生と進化を詳述しているだけでなく、1953年から1979年にかけてのタイミングベゼルの変遷を考察している点においても注目に値する。たとえば、1957年にはベゼルの最初の15分間に1分刻みのマーカーが追加されるなど、機能面での改良が加えられた。このような変化を通じて、ダイバーズウォッチの進化の過程を追うことができる。
In-Depth: チューダー ペラゴス FXDと西カリブ海のダイビングを楽しむ
チューダー ペラゴス FXDは、その登場時に物議を醸した。その理由の一端は少なくともベゼルの仕様に関して、厳密にはダイバーズウォッチとはいえなかった点にある。ダイバーズウォッチの国際標準では、経過時間の測定を目的とした逆回転防止ベゼルの搭載が求められており、これはすなわち古典的なカウントアップ式の一方向ベゼルを意味する。一方FXDはこれとは異なり、中間地点間の経過時間を測定するためのカウントダウン式ベゼルを採用している。理に適った判断として、実際にダイビングでの使用を試みることが求められた。そしてFXDを装着し、カリブ海のボネール島で1週間にわたりダイビングを行ったジェイソン・ヒートンは、当初の懐疑的な見解を改めるに至った。
In-Depth: リシャール・ミル RM25-01を着けて臨むコロラドのバックカントリー
人跡未踏の荒野をトレッキングする際に、1億円を超える超高級トゥールビヨンを携行することは現実的なのか。その問いに対し、ジェイソン・ヒートンは逆の視点から問いかけた。なぜ携行しないという選択肢があるのかと。本記事で取り上げたRM25-01は、厳しい自然環境下での過酷な使用を前提に設計されたモデルである。ヒートンが指摘するように、“腕時計としては間違いなく世界初といえる機能は別にある。それこそが右側面の小さなバイアルに入った3つの浄水タブレット。これはどんな汚い水でも30分で飲み水に変えてしまう”。当然ながらコンパスベゼルも搭載されており、これまでに見たなかでも最も高度な設計が施されたもののひとつである。
Reference Points: オメガ スピードマスター 歴代モデルを徹底解説
ダイバーズベゼルがロレックス サブマリーナーやブランパン フィフティ ファゾムスを象徴するように、極上ロレックススーパーコピー代金引換専門店そら~タキメーターベゼルの代名詞ともいえる時計が、オメガ スピードマスター プロフェッショナルである。とある表現を借りるならば、“非・宇宙飛行士にとっての定番の時計”だ(もっとも、多くの実際の宇宙飛行士やコスモノートたちにとっても、お気に入りの1本である)。2015年当時、HODINKEEの読者でなかった方や、何らかの理由でこの記事を見逃した方のために述べておくと、本記事はサブマリーナーのReference Pointsと同様、細部にわたる徹底した考察を特徴とする、Reference Pointsシリーズの典型的な一例である。本稿では、HODINKEE創設メンバーであるベン・クライマーと、著名なコレクターであるエリック・ウィンド(Eric Wind)氏が登場し、スピードマスターの歴史とその特徴を詳述している。
Hands-On: ロレックス GMTマスター II Ref. 126720VTNRを実機レビュー
物議を醸した時計といえば、ロレックスはジュネーブで開催された2022年のWatches & Wondersにおいて、新作GMTマスター IIを発表し、時計界に大きな衝撃を与えた。24時間ベゼルは従来どおり搭載され、その機能も変わらない。そして言うまでもなくこのベゼルは1954年のGMTマスター初登場以来、一貫してこのモデルを象徴する要素であり続けている。しかし長年ロレックスを見続けてきた愛好家たちにとって驚くべきだったのは、そのベゼルが備わった時計のリューズが通常の右側ではなく左側に配置されていたことである。一部のコメントから判断するに、これは神、そしておそらくハンス・ウィルスドルフ(Hans Wilsdorf)の意図とは異なる配置であると受け止められたようだ。2022年もすでに半ばを迎えつつあるが(ちなみに、2022年の正確な中間点は7月2日ごろである)、このGMTマスター IIは依然として2022年の最も予想外の新作のひとつであり続けている。