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ゼニス 新しいパイロット コレクションを発表。

ゼニスが長年培ってきたパイロット コレクションにエル・プリメロキャリバーを搭載し、現代風なアレンジを加えた。

ゼニスは長年にわたって親しまれてきたパイロットウォッチを一新し、SS製ケース、またはブラックセラミック製のパイロット オートマティックとビッグ デイト フライバックの4モデルからなる新しいゼニス パイロット コレクションを発表した。パイロット オートマティックは直径40mm、ビッグデイト パイロット フライバックは直径42.5mmとなっている。4モデルとも水平方向に彫られた溝、大きなアラビア数字がインデックスに施され、ゼニススーパーコピー刷新されたケース&ベゼルデザインを備えている。

パイロット オートマティック
zenith pilot automatic steel ceramic
 ゼニスのパイロットウォッチ、その新時代の基礎となるのが、新作パイロット オートマティックだ。ケースデザインは本モデルのためにいちから開発され、丸みを帯びたケースの上に大きなフラットベゼルが乗せられている。リューズは大振りで、昔ながらのオニオンリューズを現代風にアレンジしたような、まさにパイロットウォッチに期待されているデザインだ。SSの場合、表面はブラッシュ仕上げで、ポリッシュ仕上げによる面取りがなされている。ブラックセラミックのケースは全体にマイクロブラスト加工が施され、マットな仕上がりとなっている。

 文字盤には、針と同様にスーパールミノバが塗布された大型のアラビア数字を配置。ダニエル・ロートやIWC(そのロングセラーであるマークシリーズ)など、さまざまなブランドが採用し、ときには大きな反響を呼んだモダンなサンセリフのフォントを使用している。

 パイロットウォッチをモダンに仕上げるには、このようなフォント以外の選択肢はないだろう。数字も大きく太字だが、多くのパイロットウォッチと同じように“読みやすさ”のひと言で説明が可能だ。6時位置にはデイト表示があり、そのすぐ下には水平にラインが入っている。これは飛行機のダッシュボードにある姿勢指示器(パイロットが地球の水平線に対する方位を把握できるように設計されている)を想起させるディテールだ。

zenith pilot automatic ceramic
 内部にはゼニスの自動巻きムーブメント、エル・プリメロ 3620を搭載。これは3万6000振動/時で鼓動する高振動ムーブメントで、60時間のパワーリザーブを備える。2022年、ゼニスがデファイ スカイライン コレクションにこのムーブメントを導入した際に、私たちは詳しく解説した。エル・プリメロ 3620の詳細については、その記事を読んで欲しい。新しいパイロット オートマティックの希望小売価格は、SSが96万8000円、セラミックが121万円(ともに税込)だ。

パイロット ビッグデイト フライバック
zenith pilot big date flyback steel ceramic
 新しいパイロット オートマティックとともに、ゼニスはクロノグラフのペア、パイロット ビッグデイト フライバックも発表した(こちらもSSとセラミック製)。自動巻き2種とクロノグラフ2種による4つの選択肢が、パイロット コレクションの立ち上げをより強固なものにしている。それでは、これらの新しいフライバックについて詳しく見ていくことにしよう。

 どちらもサイズは直径42.5mmで、新開発の自動巻きムーブメント、エル・プリメロ 3652を搭載。定評のあるエル・プリメロ 3600ムーブメントにビッグデイトとフライバックの機能を付加し、なおかつ3万6000振動/時で60時間のパワーリザーブを備えている。ゼニスによると、ビッグデイト機能は瞬時に切り替わり、各ディスクがジャンプして安定するまでの所要時間はわずか0.02秒だそうだ。この新しいムーブメントについての詳しい情報はまだ得られていないが、Watches & Wondersでのミーティングの際にゼニスに質問できるのを楽しみにしている。

zenith big date pilot flyback
なお、Watches & Wondersに先立ち、ビッグデイト フライバックの実機を体験することができた。来週には、ゼニスの新しいパイロット コレクション全体のHands-On インプレッションをお届けする予定だ。

zenith el primero chronograph big date pilot dial
zenith el primero chronograph big date pilot
 セラミック製のビッグデイト フライバックは、ブラックの単色使いにコントラストの効いた白の数字や針が映えるクールなデザインだ。人々がブラックのセラミックモデルに注目するなか、SS製フライバックもこっそりと姿を現し、私たちを楽しませてくれた。1997年に発表されたエル・プリメロ“レインボー”を彷彿とさせるこのモデルは、5分間隔を判別しやすくするために明るい色を交互に配したミニッツトータライザーを備えている。センターセコンド針とクロノグラフのミニッツカウンターも、鮮やかなオレンジ色で仕上げられている。

 SS製ビッグデイト フライバックの価格は146万3000円、セラミック製は172万7000円(ともに税込)で販売予定だ。

 4つの時計はそれぞれゼニスによる交換可能なストラップシステムを採用しており、SS製モデルにはレザーとブラックの“コーデュラエフェクト”ラバー、セラミック製モデルにはブラックとカーキの“コーデュラエフェクト”ラバーストラップが付属する。

我々の考え
zenith el primero chronograph big date pilot wristshot
ゼニスは、新しいパイロット コレクションで、商業的なヒットを手に入れるかもしれない。Watches & Wondersでこれらを見る前に完全なスペックを入手することはできなかったが、その前夜、ジュネーブのダウンタウンにある薄暗いバーでセラミック製のビッグデイト フライバック クロノグラフを数分間触ることができたのだ。そのとき私は、感動したと言うほかにない。このコレクションのほかのモデルに触れるのが、楽しみになった。

 ゼニスは新しいビッグデイト フライバックの厚さを明らかにしていないが、数分間着用した結果からすると、約13mmであることは間違いないだろう。ブラックセラミックとコーデュラストラップを組み合わせたケースは手首の上でバランスよく調和し、大きめながらまとまりのある雰囲気を醸し出していた。まさに、現代のパイロットウォッチに求められるものである。

 理論的には、ブラックセラミック製のパイロットウォッチは非常に有効だ(私たちが作ったものを見れば、よくわかる)。40mmと42.5mmの2サイズは、それぞれ時間表示のみの時計とクロノグラフの時計にとって、現代のゴルディロックスゾーン(太陽系外惑星のうち、生命の存在と維持に適した環境を指す)なのだ。パイロットウォッチは大きいのが当たり前で、このモデルも同様なのだが、行きすぎた大きさではない。

 ゼニスが2013年にパイロットウォッチでビッグデイトを試みたことを、アーカイブが親切にも思い出させてくれた。この新しいコレクションは、そのときのリリースよりも強固な視点から作られており、新鮮だ。確かに“完全にゼロから再設計された(これはゼニスの言葉だ)”パイロットラインはあなたの好みではないかもしれない。だが、ゼニスが歴史的なコレクションを現代的に再構築しようとしているのを目の当たりにできるのは、素晴らしいことだ。

 新しいパイロット コレクションが好調であれば、混沌としたパイロットウォッチのカテゴリーにゼニスが参入することになるかもしれない。もちろん、IWCはこの分野におけるビッグパイロットであり、ゼニスの新しいパイロット コレクションはIWCの競合モデルよりも高い価格設定となっている(SS製の場合、IWCビッグパイロット43は120万4500円、パイロット クロノグラフは 101万7500円、マークXXは72万6000円、以上すべて税込)。まあ、エル・プリメロムーブメントの搭載により、ゼニスのコレクションの根幹部分はより技術的に興味深いものとなっているわけだが。

 各モデルの文字盤の6時位置には、これまでのゼニスのパイロットウォッチでおなじみの引用符とフォントで“Pilot”と記されている。「ゼニスは、文字盤にこの言葉を記す権利を獲得した初にして唯一のブランドです」と、1904年に初めてこの言葉を商標登録したブランドであるゼニスは述べ、まるでほかのすべての時計会社の弁護士を挑発するような表現でこの言葉を説明した。今、ゼニスはパイロットウォッチを徹底的にモダンにアレンジし、さらなる進化を遂げようとしているのだ。

zenith el primero chronograph big date pilot
基本情報
パイロット オートマティック
ブランド: ゼニス(Zenith)
モデル名: パイロット オートマティック(Pilot Automatic)
型番: 03.4000.3620/21.I001(SS製)、49.4000.3652/21.I001(セラミック製)

直径: 40mm
ケース素材: SSとセラミックから選択可能
文字盤色: 黒文字盤に、水平線の彫り
インデックス: アプライド、アラビア数字
夜光: 数字と針にスーパールミノバ(SLN C1)
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ブラックの“コーデュラエフェクト”とブラウンのカーフスキンレザーストラップ(SS製)、ブラックとカーキの“コーデュラエフェクト”ラバーストラップ(セラミック製)

パイロット ビッグデイト フライバック
ブランド: ゼニス(Zenith)
モデル名: パイロット ビッグデイト フライバック(Pilot Big Date Flyback)
型番: 03.4000.3652/21.I001(SS製)、03.4000.3620/21.I001(セラミック製)

直径: 40mm
ケース素材: SSとセラミックから選択可能
文字盤色: 黒文字盤に、水平線の彫り
インデックス: アプライド、アラビア数字
夜光: 数字と針にスーパールミノバ(SLN C1)
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ブラックの“コーデュラエフェクト”とブラウンのカーフスキンレザーストラップ(SS製)、ブラックとカーキの“コーデュラエフェクト”ラバーストラップ(セラミック製)

zenith el primero 3620 caliber
ゼニス製、エル・プリメロCal.3620、センターセコンドを搭載。

zenith caliber big date 3600
ゼニスのムーブメント、エル・プリメロ ビッグデイト フライバック。

ムーブメント情報
パイロット オートマティック
キャリバー: エル・プリメロ 3620
機能: 時・分・秒表示とデイト表示
直径: 30mm
パワーリザーブ: 60時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 3万6000振動/時
石数: 26

パイロット ビッグデイト フライバック
キャリバー: エル・プリメロ 3652
機能: ビッグデイト、フライバック機能付きクロノグラフ(3時位置に30分積算計)、ビッグデイトの瞬時ジャンプ機能
パワーリザーブ: 60時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 3万6000振動/時

価格 & 発売時期
価格:

SS製オートマティック: 96万8000円(税込)
セラミック製オートマティック: 121万円(税込)
SS製ビッグデイト フライバック: 146万3000円(税込)
セラミック製ビッグデイト フライバック: 172万7000円(税込)

パテック フィリップ カラトラバ Ref.5224R-001 、本作では24時間表示を搭載した。

パテック フィリップ カラトラバ Ref.5224R-001 、本作では24時間表示を搭載した。

パテック フィリップ カラトラバ Ref.5224R-001。24時間表示を備えた新作トラベルタイム。

パテック フィリップのトラベルタイム・クロノグラフ Ref.5924Gを紹介した。Ref.5924Gはクロノグラフとトラベルタイム機能を組み合わせた新しいタイプの時計で、トラベルタイムはパテック フィリップにおける象徴的な複雑機構でもある。そして今回、そのシグネチャーを別の形で実現したのが、24時間表示を備えたパテック フィリップスーパーコピー時計 カラトラバ・トラベルタイム Ref.5224R-001だ。このモデルはトラベルタイムでありながら、24時間表示であることを特徴としている。

新しいカラトラバ Ref.5224Rは、24時間ダイヤルを追跡する2本のセンター針で、ホームタイムとローカルタイムを計測する。パテックは過去にもこのような24時間ダイヤルを製造しており、そのなかでも代表的なものにゴンドーロの懐中時計が挙げられるが、そのなかのひとつは現在パテック フィリップ・ミュージアムに展示されている。24時間表示を現代のリファレンスに復活させたのは、歴史的に見ても素晴らしいことだと思う。また、正午が通常の6時位置ではなく、12時位置に配置されていることにお気づきだろう。パテックによると、これは日中の視認性を確保するためだという。

ローズゴールドのケースは直径42mmで、カーブしたダブルステップラグは、特に腕に装着した際に薄い印象を与えているように見える(下の写真は、ジェームズの腕に装着した5224R)。文字盤は大きめだが、センターのサーキュラーストライプ、ラウンド状のサテン仕上げが施されたアワートラック、スモールセコンドのスネイル仕上げなど、異なる仕上げの組み合わせがデザインにバランスを与えている。

24時間表示を可能にしたのは、48時間のパワーリザーブを持つマイクロロータームーブメントの新キャリバー、31-260 PS FUS 24Hだ。ほかのパテック トラベルタイムではおなじみのプッシャーによるデュアルタイムゾーン調整ではなく、新作Ref.5224Rでは特許を取得した新しい3ポジションリューズによりその操作を行う。真ん中のポジションではローカルタイムを1時間単位で設定でき、いちばん外側のポジションではホームタイムとローカルタイムを同時に設定することが可能だ。すべてはサファイアクリスタルのシースルーバックから見ることができる。この時計にはブルーのヌバックストラップが付属し、カラトラバを少しばかりドレスアップしてくれている。この新作は771万1000円(税込)。参考までに、ローズゴールド製のアクアノート・トラベルタイムは842万6000円(税込)である。

現在、パテック フィリップのようにトラベルウォッチを手がけているブランドはほとんどないが、このバリエーションはドレッシーさとスポーティさをバランスよく兼ね備えている。大振りな24時間表示はパテックの懐中時計だけでなく、コレクターが好む20世紀半ばの特大の飛行士用時計(ユニバーサル・ジュネーブのこの時計のように)にも回帰しているようだ。しかしクロノグラフの代わりにトラベルタイムを搭載していることから、現代のジェットセッターにとってより有用であることは間違いない。

全体的に配慮が行き届いていて、パッケージとしてまとまった印象だ。ブルーの文字盤は鮮やかで、目に負担をかけないようにさまざまな仕上げが施されている。

パテックのこれまでのトラベルタイム(Ref.5524など)には大きなプッシャーが見られたが、この新しいムーブメントではプッシャーそのものが廃止され、完全にバランスのとれたケースになっている。つまり、正統派のカラトラバと言えるだろう。

パテックによると、ローズゴールドの数字とインデックスは手作業で植字され、数字と注射針状の針には夜光が充填されている。新作Ref.5224Rが伝統的なインスピレーションと現代的な複雑機構のバランスをとっているのと同様に、ここにも伝統とスポーティさの調和が見てとれる。

基本情報
ブランド: パテック フィリップ(Patek Philippe)
モデル名: カラトラバ・トラベルタイム(Calatrava Travel Time)
型番: 5224R-001

直径: 42mm
厚み: 10.2mm
ケース素材: ローズゴールド
文字盤色: ブルー
インデックス: 手作業の植字によるローズゴールド製アラビア数字、カボションの5ミニッツマーカー
夜光: あり
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ネイビーブルーのカーフスキン(ヌバック仕上げ)、コントラストの効いたクリームカラーのハンドステッチ、ローズゴールド製のプロングバックル

Patek Philippe 5224R movement
ムーブメント情報
キャリバー: 31‑260 PS FUS 24H
機能: 24時間表示が可能なデュアルタイムゾーン
直径: 31.7mm
厚み: 3.7mm
パワーリザーブ: 48時間
巻き上げ方式: 自動巻き(プラチナ製マイクロローター)
振動数: 2万8800振動/時
石数: 44
追加情報: 総パーツ数240点、パテック フィリップ・シール

価格 & 発売時期
価格: 771万1000円(税込)

ァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズの新作が登場。

レトログラード・デイトはヴァシュロンのラインナップの中核をなす存在だが、これほどスポーティなタイプは珍しい(しかも、新しいレトログラードはこれだけではない)。

ヴァシュロン・コンスタンタンにとって“222”の年であったとしたら、今年は“レトログラード”の年だ。ヴァシュロン・コンスタンタンはオーヴァーシーズコレクションに初めてレトログラードによるデイト表示を導入し、スーパーコピー時計旧来の機能にスポーティな空気を加えた。

自社製キャリバーの2460 R31L/2はレトログラード式のデイト表示(文字盤の上半分を時計回りに移動し、31日か、あらかじめ設定された日をすぎると1日にジャンプバックする)を備え、1日のズレが発生する122年先まで修正の必要がない超高精度なムーンフェイズを搭載している。

これらの表示は、ベルベット仕上げのフランジとサンレイ・サテン仕上げのセンター部からなる、ブルーのラッカー文字盤に反映されている。また、ムーンフェイズの開口部、その上には“月齢”のインジケーターがあり、それを見ると地球の周りを29日12時間45分のサイクルで回る月の位置を示していることがわかるだろう。

オーヴァーシーズは1996年より、ブランドの主力商品として展開されてきた。2016年にデザインが一新され、SSの一体型スポーツウォッチの需要が高まって以降は、同モデルはブランドの最も重要な柱のひとつに成長した。そんなオーヴァーシーズの41mmデザインに、今回Cal.2460 R31L/2が搭載されたことは大きなニュースだ。ヴァシュロンのスタイル・アンド・ヘリテージ・ディレクターを務めるクリスチャン・セルモニ氏によると、キャリバーとケースの組み合わせは3年間の研究開発の成果であり、直径41mm、厚さ10.48mm、50m防水のパッケージに仕上げられている。

加えて直近ではオーヴァーシーズだけでなく、さらにふたつのレトログラード搭載モデルが発表されている。ピンクゴールドで41mm径のトラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスと、プラチナ製で42.5mm径のパトリモニー・レトログラード・ デイデイトだ。この2モデルの詳細については、続報をお楽しみに。

新しいヴァシュロン・コンスタンタンのオーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイトは、ヴァシュロン・コンスタンタンブティックでのみ販売され、ブランドによると価格は近日中に公開するとのことだ(ご期待ください)。

我々の考え
スポーツウォッチのSS製ケースにレトログラード式のデイト表示を搭載するのは、どこか奇妙な感じだ。パーペチュアルカレンダーやミニッツリピーターなど、スポーツウォッチにはエレガントで目まぐるしい複雑機構が搭載されるものだが、レトログラード式のデイト表示はなぜか古めかしくさえ思えるのだ。しかし、だからこそ、私はモダンとクラシックの融合をよりいっそう愛おしく思う。

数週間前に私は、時計業界のある人物と長い時間語り合っていた。時計ブランドが市場で自身を位置づける際に、広大な戦場で正面から競い合うパターンと、ニッチな市場を切り開くための小道を開拓するパターンについてだ。私は、複雑機構のなかでもレトログラードがニッチなものであると同時に象徴的でもあり、ヴァシュロンがブランドを強く定義してノイズから解放されるために活用できるものであると力説した。50m防水のSS製“スポーツウォッチ”に特にスポーティではない複雑機構を搭載することは、一見不協和音のように見えるかもしれない。しかし、この機構がさまざまな観点からブランドを表現し、搭載モデルをその他大勢と区別するのに役立つと私は考えている。

また、オーヴァーシーズはSS製スポーツモデルのなかでも特に着用感に優れることに加え、ストラップのクイックチェンジシステムを採用している。このことからも、近い将来にレトログラード・デイトを新たに所有する人が続出するかもしれないと考えている。

基本情報
ブランド: ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)
モデル名: オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト
型番: 4000V/210A-B911

直径: 41mm
厚み: 10.48mm
ケース素材: SS
文字盤色: 半透明のブルーラッカー、サテン・サンレイ仕上げのベース部とベルベット仕上げのフランジ部
インデックス: 18Kホワイトゴールド製のアワーマーカーと時・分・デイト表示
夜光: 上記のインデックス部分と、ブルーのスーパールミノバ®で強調された針
防水性能: 50m
ストラップ / ブレスレット: SS製、ハーフマルタクロスシェイプのポリッシュ仕上げとサテン仕上げリンク、プッシュボタンとコンフォートアジャストシステムを備えたSS製トリプルブレードフォールディングクラスプ

The Caliber 2460 R31L/2 dial side
Cal.2460 R31L/2のダイヤル側。

The Caliber 2460 R31L/2 rear side
Cal.2460 R31L/2の裏側。

ムーブメント情報
キャリバー: 2460 R31L/2
機能: 時・分、レトログラード・デイト、プレシジョンムーンフェイズ、月齢表示
直径: 27.2 mm
厚み: 5.4mm
パワーリザーブ: 不明(わかり次第アップデート)
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27
追加情報: 高精度ムーンフェイズは122年に1度、1日の補正が必要

ティソ T-タッチは、世界初のタクタイル(触覚)ウォッチとして1999年に誕生した。

これまでにも幾度となく進化を繰り返してきた同モデルの最新機種は、絞り込んだ機能性とソーラーエネルギーによる自律性を備えながら使い勝手を大きく向上させている。スマートウォッチやコネクテッドウォッチがマーケットに増えているなかで、スイスの伝統ある時計ブランドは何に取り組むべきか? その答えのひとつが、ここにある。

豊かな自然にあふれるスイスでは、ハイキングやトレッキング、スキーなど、自然と触れ合うスポーツが国民にとにかく愛されている。ティソ T-タッチはそんなスポーツ愛好家に向けて、1999年に生まれた。このモデルにおいてとりわけ画期的だったのは、方位や気温などの機能の選択を、リューズやボタンの操作ではなくダイヤルをタッチして行うタクタイル技術だ。機能性が高まるにつれて操作が煩雑になるという高機能ウォッチのジレンマを、ティソはテクノロジーをもって解決したのだ。

リシャールミルスーパーコピーN級品代引きT-タッチは発売から瞬く間に話題となり、スイスにおける高機能スポーツウォッチの代名詞となった。2004年にはマイクロソフトとパートナーシップを結んで世界初のコネクテッドウォッチ「ティソ High-T」をリリースし、2014年からはソーラー駆動に進化。より使いやすくアップデートを重ねている。そして今年は大幅にサイズダウンし、都会的な印象を強めた「T-タッチ コネクト スポーツ」がラインナップに追加された。T-タッチコレクションは誕生から25年経った今もなお、進化を続けている。

T-タッチコレクションにラインナップされているT-タッチ コネクト ソーラーと新しいT-タッチ コネクト スポーツを並べると、その差は一目瞭然だ。比較してケース径が4mm小さくなり、ベゼルもよりシンプルに、スタイリッシュになった。さらにリューズをなくしたことで、ケースのタイトな印象は強まっている。ケース厚もT-タッチ コネクト ソーラーが15.3mmであるのに対して、T-タッチ コネクト スポーツは12.8mmとかなり薄くなった。これは何を意味しているのか? GPS機能を時計本体に内蔵し、本格的な登山家からも愛されるT-タッチ コネクトソーラーが純然たる“ツールウォッチ”である一方で、T-タッチ コネクト スポーツは、日常使いの時計としての需要を満たしながらスポーツシーンとシームレスにつなぐことを目的として開発されているのだ。

機械式時計愛好家にとっても、ティソ T-タッチ コネクト スポーツの43mmというケースサイズは親しみがあるものだ。クロノグラフやダイバーズなどスポーツウォッチのカテゴリにおいては王道ともいえるサイズであり、手首にもよく馴染む。しかしT-タッチの根幹にあるユーザビリティを無視しているわけではない。例えば風防全面に配されていたタクタイルテクノロジーは、6時位置のAMOLEDスクリーンへと継承されている。このスクリーン部を風防の上から左右上下にスワイプすることで機能を選択し、タッチ&サイドのボタンで操作する。スマートウォッチをはじめとしたデジタルデバイスでは、複雑なマニュアルに頼らずとも直感的な操作ができなければユーザビリティは大きく低下してしまう。しかしT-タッチは誕生以来一貫してユーザー目線での使いやすさに配慮しており、今回の新作であるT-タッチ コネクト スポーツでもその伝統は継承されている。

しかしなぜ、ティソはティソ T-タッチにユーザビリティを求め続けるのだろうか? そこには、ティソの企業文化も関係してくる。同社は世界初の耐磁時計(1930年)や世界初の24タイムゾーンウォッチ(1953年)など、積極的に新しい技術にトライしてきた。そのすべては、ユーザーのためによりよい時計を開発したいという思いがあったからこそ。T-タッチの場合も、まずは“アナログウォッチである”という基本を守り、高い視認性と優れた操作性、心地よい着用感を追求してきた。そのうえで、T-タッチ コネクト スポーツではT-タッチ コネクト ソーラーとの差別化を図る意味でも機能を絞り込むことで消費電力を抑え、それに伴って小型化と薄型化も実現。ケース素材にはチタン、ベゼルにはセラミックを使用し、スポーツシーンにもふさわしいタフネスと軽さ、そして日常使いにもうれしい高級感を取り入れている。

ティソはブランドが理想とする時計製造を叶えるためにル・ロックルを中心に時計工場をいくつも所有し、世界最大の時計コングロマリット、スウォッチ・グループに属している。ティソ T-タッチ コネクト スポーツは、そういったバックボーンとノウハウがあったからこそ実現した時計だ。

その恩恵のひとつが、頭脳であるOSにも表れている。コネクテッドウォッチのOSとしてはiOSやアンドロイド、そしてファーウェイが開発したハーモニーがあるが、T-タッチではグループ傘下の企業やスイス電子工学・マイクロ技術研究センター(CSEM)と共同開発したSw-ALPS(スワルプス)というOSが使用されている。他社OSの場合、アップデートの内容によっては時計そのものが使用できなくなるリスクもあるが、独自OSを使えばその心配はなくなる。

また、ティソはロゴマークにスイス国旗であるスイスクロスを掲げるほど母国を代表する自負を持っている。ゆえにムーブメントだけでなく、頭脳であるOSもスイス製にこだわったのだ。また、自社で完結したOSであるためにデータを他社に提供する必要がなく、顧客のプライバシーを守ることができるのも現代的観点からのメリットと言える。

そして光発電を行うソーラーセルも、スウォッチ・グループ内部で開発している。担当したのは、ヒゲゼンマイの製造でおなじみのニヴァロックス・ファー。同社が設計・製造した太陽電池システムは発電効率に優れ、小さくなったダイヤル面積でも十分な電力を確保できるうえ、光量の低い屋内などでもしっかりと発電が可能だ(その発電状況はAMOLEDスクリーン上でリアルタイムで確認できる)。ソーラーセルは一枚タイプをとったため、ダイヤルの美観も維持できている。こういった点には、伝統ある時計ブランドらしい矜持が垣間見える。

ケースの小型化に合わせて電子回路も新しく設計されており、発電した電気を貯める二次電池も内部のスペースに合わせて選択するなど、小型・薄型化の実現のために見えない部分を細かく詰めている。こうした開発が可能なのも、電子回路やムーブメントの製造、組み立てまでもすべてグループ内で完結しているからであり、その独立性こそが時計としてのクオリティを高めているのだ。

これだけ高性能な時計でありながら、ティソ T-タッチ コネクト スポーツではあえて“できること”を絞り込んでいる。従来のT-タッチで見られた高度/気圧、方位を計測するセンサーは搭載せず、アクティビティに関する機能はワークアウト、ハイキング、サイクリング、ランニングにとどめた。その一方で日常的によく使う歩数計測機能を充実させ、新たに搭載された心拍測定機能によって、体の状況を正確に把握できるようにしている。

この時計はプロのアスリートというよりも、日々のライフスタイルのなかにスポーツがあるようなアクティブな人々のためにある。スポーツシーンとシームレスに結びつけてくれる機能的なアナログウォッチの存在が、生活をより充実させてくれるだろう。

ティソ T-タッチ コネクト スポーツは、あくまでもコネクテッドウォッチである前にアナログウォッチであるというスタンスをとっている。そのため、機能性をシンプルに絞り込むことで時計自体をスマート化する方向で開発は行われた。しかもすべてをグループ内で製造しているために、OSの更新や電池の廃盤といった外的な要因によって使用できなくなるという心配もない。

チタンやセラミックを巧みに用いた質感の高い外装に加えて、高効率のソーラーパネルによって充電のストレスからも開放されたT-タッチは時計単体のクオリティも満足感が高い。ユーザーのライフスタイルに変化があって、仮にコネクテッド機能を使わなくなったとしてもスイス製高級時計として長く楽しむことができるのだ。数々の世界初を成し遂げてきたティソは、このジャンルにおいてもまぎれもないイノベーターであるのだ。

ウルベルクがUR-230は、ホリデーシーズンに合わせて極地仕様で登場する。

今週、ウルベルクはUR-230 イーグルの続編となるUR-230 ポラリスを発表した。UR-230 イーグルは、Cal.UR-7.30にタービンを組み込んだことで注目を集めたモデルである。一見すると、今回のUR-230 ポラリスは新しいカラーリングに見えるかもしれないが、それだけではない。

ムーブメントと時刻表示は非常にウルベルクらしい見た目をしている。象徴的な回転式サテライトコンプリケーションは、3本のアームを備えたカルーセルに回転するブロックを組み合わせ、ダイヤル上のミニッツトラックに沿って現在の時刻を示す仕組みだ。これは、伝統的なワンダリングアワー機構をより複雑に進化させたものと言える。レトログラード式の分針(現在の時刻をフレームで囲む針)が60分に到達すると、次のアームがミニッツトラックのゼロ地点に到達し、針が瞬時にスプリングバックしてそのアームをフレームで囲む。このダイナミックな動作がウルベルクならではの個性を際立たせている。

だが、カルティエスーパーコピー代引きそれだけでは十分ではなかった。UR-230の最大の特徴は、前述のタービンにある。これはアクティブなシーンで発生する衝撃から、時計を保護するための機構として設計されたものだ。裏蓋にあるふたつのノブのうちひとつは、ローターの作動を完全にオン/オフする役割を果たす。つまり理論上、ローターが過度に露出するような激しい環境、たとえば強いGフォースがかかる状況でも、この時計を使用できるというわけだ。もう一方のノブは時計内部に取り込む空気量を調整できる機構であり、ローターに対する可変式のエアブレーキのような役割を果たす。

44.8mm×53.55mmのケース形状は初代モデルと変わらず、DLC処理が施されたチタンとTPTカーボンの層を組み合わせた構造となっている。その無骨なフォルムはまさにウルベルクらしいものであり、台形のシルエットに加えてケース全体に施された数々の角や凹凸、細部の造形が特徴的だ。新たに登場したポラリスでは、保護カバーシールドが取り除かれ、産業的な趣を持つムーブメントが収まった大きなサファイアクリスタルが全面に姿を現した。メカニズム面では、Cal.UR-7.30を気密性の高いチャンバー内に封入し、空気の流入を厳密に制御することで、タービンがその機能を最大限に発揮できるようになっている。

このモデルで最も目を引く変化はそのカラーリングだが、これは単なる新しい塗装ではない。フェリックス・バウムガルトナー(Felix Baumgartner)氏とマーティン・フライ(Martin Frei)氏は、カーボンTPTから一歩進んだ新しい繊維ベースのセラミックを開発・追求した。従来のセラミックケースで見られる、ジルコニウム酸化物のような粉末を高圧成型し、焼結する手法とは異なるアプローチを選んだのだ。従来の粉末セラミックは非常に高い耐傷性を誇る一方で、非常にもろいという欠点があった。ホワイトカラーの時計を求める人々にとっては、コーティングされていないユニークなカラーを選ぶか、テーブルの角に当てて時計を割ってしまうリスクを受け入れるかというトレードオフが常に存在してきたのだ。だがウルベルクはここで妥協点を見つけたようだ。それはガラス繊維で強化された、織り込みセラミックシートの層を使用することだ。ブランドはこの素材の詳細を明らかにしていないが、推測するに、この独自素材はアルミノシリケート系耐火セラミック繊維で構成されている可能性が高い。

この新素材はカーボンファイバーシートに代わる巧妙な選択肢であり、オールホワイトの美しい外観を実現した。ケース内のガラス繊維を結合する樹脂が白い色調を生み出し、ガラス繊維自体はわずかに銀色を帯びているため、外装にメタリックな質感を与えている。見た目にも間違いなく印象的だ。ケースと、主にブラックのムーブメントおよびダイヤルとのコントラストが最大限に際立っている。この時計にはホワイトの加硫ラバーストラップと組み合わされ、全体として産業的かつ未来的な美学を一貫して表現している。

ウルベルク UR-230 ポラリスは35本限定で、価格は15万スイスフラン(日本円で約2575万円)である。

我々の考え
ウルベルクのホワイト系デザインは珍しい。思い浮かぶのは、2020年に登場したEMCタイムハンター “ストームトルーパー”のホワイトセラミックコーティングケースくらいだ。しかしセラミックコーティングは仕上げの長期的な耐久性を必ずしも保証するものではない。もしこの新しいセラミックとガラス繊維の複合素材が十分な耐久性を持つのであれば、ウルベルクがホワイトを今後のラインナップに積極的に取り入れる鍵となるかもしれない。ただしカーボンTPTと同様に、この素材が持つプラスチックのような質感が、潜在的なオーナーをためらわせる要因になるかもしれない。だがそのあたりの詳しい感想は、実際にポラリスを手に取ってからにしたいと思う。

ウルベルクの目を引く時刻表示の複雑機構は、依然としてほかにはない独自の存在感を放っている。しかし、このタービンが設計された過酷な環境にどれほどのオーナーが実際に時計をさらすのかは気になるところだ。特にこの時計の防水性能が30mに限られていることを考えるとなおさらである。結局のところ、このモデルはG.A.D.A.(どこでも何にでも対応する)ウォッチではない。個人的には、巻き上げローターを解除できる機能だけでも、より低価格帯のスポーツウォッチに採用されるのを見てみたいと思う。現時点でこの機能を提供しているブランドは、さらに高価格帯のリシャール・ミルくらいだろう。ウルベルクのよりシンプルなモデルにこの機能が導入されれば、気密チャンバーや制御された空気流入、タービンといった全力のクレイジーさから一歩引いた、手ごろな妥協点となるかもしれない。それにより、ブランド全体のコレクションにさらなる耐衝撃性をもたらすことも期待できるだろう。

基本情報
urwerk soldier shot
ブランド: ウルベルク(Urwerk)
モデル名: UR-230 ポラリス

直径: 幅44.81mm、長さ53.55mm
厚さ: 18.38mm
ケース素材: ホワイトセラミックのガラス繊維複合素材、チタン製ケースバック
文字盤: ブラック
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ホワイトラバーストラップ

ムーブメント情報
キャリバー: UR-7.30
機能: 時・分表示、ローター解除機能、可変式エアブレーキ
パワーリザーブ: 約48時間
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻きも可能)
振動数: 2万8800振動/時
石数: 50

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