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スイスの“国民的時計”ティソが、光をエネルギーに変えて駆動し続けるPRC 100 ソーラーを発表した。

サファイアガラスの下に秘められた“光の心臓部”とともに、次世代のティソのビジョンをティソCEOであるシルヴァン・ドラ氏に聞いた。

ル・ロックルで創業したティソは170年以上も続く伝統的なブランド。スイス国旗をあしらったロゴを掲げるその姿は、“国民的時計”と称されるほど広く知られている。そんな伝統の一方で、1930年代には耐磁時計を、21世紀の幕開けにはT-タッチを、そして近年ではT-タッチ コネクトを発表するなど、常に新たなテクノロジーを時計造りに取り入れてきた。そしてその革新性の最新のかたちが、今年3月に日本で発売されたばかりの“PRC 100 ソーラー”である。クラシックな意匠に、次世代のソーラーテクノロジーを組み合わせた新作だ。ロレックススーパーコピー代引き 届けい本稿はティソのCEOであるシルヴァン・ドラ氏に話を聞きながら、PRC 100 ソーラーに込められた思想とそれが示すブランドの未来像について掘り下げていく。

初代ティソ PRC 100とは

2005年に登場したティソ PRC 100。

ベースとなったPRC 100は、2000年代初頭に登場したティソのクラシックラインで、当時のブランドが若年層への訴求を強めるなかで打ち出した意欲的なコレクションだった。PRC 100は、1980年代のPR 100をルーツに、2000年代初頭に誕生したクラシックラインだ。“Precision(高精度)”と“Robustness(堅牢性)”を受け継ぎつつ“Classic(クラシック)”の頭文字を冠し、ティソらしいクラシックな佇まいとスポーティさを両立したことで人気を集めた。今回、ソーラー新作のベースに選ばれたのは、PRC 100が時代とともに進化してきたからこそ。“ライトマスター ソーラー テクノロジー”という革新を受け入れるにふさわしい存在だった。

今回の新作はそのPRC 100を再解釈し、現代的なスペックと審美性を与えたものだ。ケース径はすべて39mmで、文字盤はシルバー、ブルー、ブラックの3色展開。いずれもサンレイ仕上げが施され、ステンレススティール製のブレスレットにはシルバーのほかPVDコーティングのブラックも用意している。また、レザーストラップ仕様も2種類あり、シルバー文字盤にはブラウンストラップ、ブラック文字盤には同色のブラックストラップが組み合わされている。

「4年前、スウォッチグループとして、T-タッチ コネクトの製造ラインを含む、完全に新設計の工場を立ち上げる機会がありました。エンジニアも工員も、特許も工作機械もすべて揃っていて、自然と新しいアイデアであるソーラー駆動でワインディング不要の時計が湧いてきたんです。しかし最先端のテクノロジーを用いながら、本当にクラシックで、伝統的な時計づくりの精神を感じさせるような審美的なモデルは、それまで存在していませんでした。そこで私たちは、1980年代に誕生し、2005年にリデザインされた“PRCコレクション”を振り返ってみることにしました。オリジナルから着想を得て、新しいテクノロジーを注ぎ込み、今日らしい新鮮味を与えたエモーショナルな時計に仕立てたかったのです」

クラシックな顔をしたソーラーの心臓部

T-タッチ コネクトコレクションに採用されているソーラー発電システム。

実は、ティソがソーラーエネルギーを活用した時計を開発するのは、今回が初めてではない。T-タッチ コネクトコレクションにおいて、これまでも独自のアプローチを試みてきた。今回のPRC 100 ソーラーでは、そうした技術的蓄積を生かしながら、ケース径39mm、厚さ9.22mmという扱いやすいサイズ感に落とし込んでいる。外観はあくまでクラシックで、機械式時計と見紛うような佇まいだが、その内部では確かに電気が生まれている。

ティソ PRC 100 ソーラー Ref.T151.422.36.051.00。6万8750円(税込)。

ブラックPVDコーティングSSケース、レザーストラップ。ケース径39mm、厚さ9.22mm。10気圧防水。スイス製クォーツ式、ソーラー充電。

その仕組みは、サファイアガラスの下に隠されたハニカム構造のアモルファス・ソーラーセル(非結晶シリコンを用いた薄膜型の太陽電池)によるものだ。ラミネート技術によってサファイアガラスに圧着されたセルから、ベゼル内側に配されたコネクターを経てムーブメントへと電力を供給している。目を凝らすか、ルーペで拡大しない限りパターンはほとんど見えず、視覚的には透明に近い。針がやや高めの位置にセットされていることもあり、ダイヤルには奥行きが生まれ、質感はきわめて豊かだ。時刻を読むたび、その深みある表情を堪能できるだろう。ストラップ幅は20mmで、もちろん交換も可能。スタイルに応じて着せ替える楽しさも用意されている。

「従来の時計では、ソーラーセルは文字盤の下に配置しなければならず、その場合は透過性のあるプラスチック素材のダイヤルで覆うしかありませんでした。ただこのやり方では時計がどうしても分厚くなってしまう。さらに、伝統的な時計製造に用いられる金属文字盤を採用し、サンレイ加工を施すことも難しかった。またマザー・オブ・パールを使うことや、ダイヤモンドを取り入れるという選択肢すら制限されてしまうんです」。だからこそ、審美性やデザインの自由度を損なわない、新しいテクノロジーが必要だったと強調するシルヴァン・ドラCEO。そして導き出された答えが、“サファイアガラスの下にアモルファス・ソーラーセルを組み込む”という方法であった。

ちなみにムーブメント自体は月差+3秒の精度を誇るスイス製、ご存じスウォッチ グループ傘下のETAによるクォーツムーブメントだ。これを動かすのは、ゼンマイが蓄えた物理的なエネルギーではない。光を電気に変換し、それをアキュムレーターと呼ばれる二次電池に蓄電。その電力によって、調速と駆動のすべてを担う。この仕組みこそ、ティソが“ライトマスター ソーラー テクノロジー”と呼ぶものである。アキュムレーターの容量は2.3V/7.7mAh。フルチャージされた状態であれば、暗所でも14カ月にわたって連続稼働が可能だ。さらに24時間の駆動力を、曇りの日の屋外の光(5000ルクス程度)であってもわずか10分の受光で、晴天時の強い日光であれば1分で確保できるという、きわめて高い充電効率も魅力のひとつである。

ティソが見つめる、スイス時計の未来

スイス、ル・ロックルにあるティソの本社。

「工場は、ル・ロックルにあるティソ本社のすぐ隣にあります。近くには、文字盤を手がけるRubattel & Weyermann(スウォッチ グループ傘下)や、針を製造するUniverso(同グループ傘下)といった部品メーカーもあります。その一角に“ファクトリー・イン・ファクトリー”というかたちで、ソーラーテクノロジー専用の製造体制を構築しました。ここではT-タッチ コネクト スポーツやライトマスター ソーラームーブメント、さらには将来のプロジェクトまでを見据えた生産体制を整えています」。この取り組みからは、単なる新技術の導入にとどまらず、ティソを軸にスウォッチ グループ全体の生産ロジスティクスが着実に最適化されている様子が見て取れる。

左が従来のサファイアガラスで、右がティソ PRC 100 ソーラーのサファイアガラス。よく見るとハニカム状のセルがあるのが分かる。

新作の美点は最先端のテクノロジーの恩恵に俗しつつ、クラシックな審美性をいまの時代にふさわしいかたちでアップデートしている点にある。美しい金属文字盤と針の立体感によって、外観は機械式時計と見紛うほどの質感を備えている。一方で、最新の設備を備えた工場では、カーボンネットゼロがすでに達成されており、生産工程でも、太陽光を駆動エネルギーとする時計本体でも、環境負荷は限りなくゼロに近い。

「この透明なソーラーテクノロジーは、一般家電やスマートフォンなどではすでに試されていたと思います。ただ私の知る限り、スイスの伝統的な時計にこれを取り入れたのは初めてでしょう。スイスを定義する言葉は3つ。ひとつは“伝統”、もうひとつは“革新”。これらふたつは多くの人がすぐに挙げるものですが、私があえて強調したいのは3つ目、“パッション”です。伝統はスイスの外に出ると、より強くその価値が感じられます。そして、そこから生まれる革新も非常に重要です。ただ、それを動かす原動力になるのがパッションです。ホッケーの試合やプロダクト開発の会議に立ち会えば、スイスのチームには確かにパッションがあることが、よく分かるんですよ」

ティソが今回のソーラーテクノロジーを他ジャンルへ展開する予定は、今のところない。あくまで“時計のための技術”として、この革新は時計づくりのなかで完結しているという。その姿勢は、ティソがどこまでも“時計ブランドであること”に誇りを持ち、また外部に頼ることなく、自社で開発・生産を行うという強い独立性にもつながっている。今回のPRC 100 ソーラーも、ETAによるムーブメント製造とニヴァロックス製のソーラーセルによって支えられており、その全体像はあくまでグループ内で完結しているのだ。

そして、このソーラーテクノロジーを今後どう展開していくのかについても、ティソはすでに明確な戦略を描いている。単発のプロジェクトではなく、ファクトリーを建設し、5年単位の計画でモジュールやムーブメントの開発を継続していく構えだ。すでにこの技術は、新しいプロダクトのベースとして位置づけられつつあり、今後さらなる広がりが期待されている。

たとえば、PRC 100 ソーラーの34mmモデルも今年6月に追加される予定で、既存の39mmモデルに対してわずかに薄型化される(厚さは9.18mm)。よりユニセックスで、パートナーとペアでつけたり、シェアもしやすいサイズ感は、コレクション全体に新たなバランスをもたらすだろう。

ソーラーテクノロジーが時計というプロダクトのなかでどのように深化していくのか。その中心に、今後もティソの存在があり続けることは間違いない。

ブランドを代表する複雑機構が、手の届く価格帯のままより小型化して再登場した。

フレデリック・コンスタントのパーペチュアルカレンダーは、機械式永久カレンダーモデルとしては最も手ごろな価格帯の1本として知られている。ハイライフコレクションであれクラシックコレクションであれ、このモデルはその他の同価格帯ブランドにとって比較基準であり続けてきた。そして今回、フレデリック・コンスタントはパーペチュアルカレンダーにまったく新しいムーブメントを搭載し、スーパーコピー 代引きケース径を40mmにサイズダウンした新作クラシック パーペチュアルカレンダー マニュファクチュールとして復活させた。

リニューアルモデルは、直径40mm、厚さ12.1mmのステンレススティール(SS)製ケースを採用。内部には自動巻きの自社製パーペチュアルカレンダームーブメント、Cal.FC-776を搭載している。このムーブメントは72時間のパワーリザーブを備え、ベーシックなペルラージュ仕上げとサーキュラー・コート・ド・ジュネーブ装飾が施されており、シースルーのケースバックからその様子を鑑賞することができる。仕上げ自体は最高級とは言えないものの、時・分表示、ムーンフェイズ、日付・曜日・月・うるう年表示といった複雑機構を網羅しており、加えてサーモンカラーのサンレイダイヤルも魅力的だ。何より価格設定は依然として競争力が高く、市場でも屈指のバリューを提供する1本と言える。本モデルは、2025年秋に165万円(税込)で発売される予定だ。

我々の考え
先日発表された小径のワールドタイマーに続き、今回新しく小径のパーペチュアルカレンダーが加わったことで、フレデリック・コンスタントはますます波に乗っているように見える。彼らが最も得意とする分野、つまり複雑機構を搭載したモデルからムーンフェイズ付きのシンプルなクォーツウォッチに至るまで、魅力的で実用的、かつ価格面でも手の届きやすい時計を着実に作り続けている印象である。

ある意味では、少しほっとする展開でもある。というのも近年のフレデリック・コンスタントは、418万円(税込)のゴールド製や854万7000円(税込)のプラチナ製トゥールビヨン、495万円(税込)のホワイトゴールド×マラカイト文字盤など、高額路線に踏み出していた時期があったからだ。どれも魅力的なモデルばかりであったが、そうした価格帯に市場がどこまで応えるのかには疑問が残った。フレデリック・コンスタントに対して顧客が求めているのはやはり“手ごろさ”であり、それはブランド自身もよく理解している。価格も165万円(税込)と、税抜でギリギリ“1万ドル”程度に設定されているのは偶然ではないだろう。近いうちに、この時計を実機で見るのが楽しみである。

基本情報
ブランド: フレデリック・コンスタント(Frederique Constant)
モデル名: クラシック パーペチュアルカレンダー マニュファクチュール
型番: FC-776SAL3H6

直径: 40mm
厚さ: 12.1mm
ケース素材: SS
文字盤色: サーモンカラーのサンレイダイヤル
インデックス: シルバーカラーのアプライドインデックス(ダイヤモンドカット)
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ダークブラウンのアリゲーターレザーストラップ(同色ステッチ入り)、フォールディングバックル付き

フレデリック・コンスタントの自社製Cal.FC-776。

ムーブメント情報
キャリバー: 自社製キャリバー FC-776
機能: 時・分表示、ムーンフェイズ、日付・曜日・月・閏年表示
パワーリザーブ: 72時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 26
クロノメーター認定: なし
追加情報: ペルラージュ仕上げおよびサーキュラー・コート・ド・ジュネーブ装飾

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